暗黒

金属犬










舞踏する前衛音楽を砕き
僕は漂う
怪我をした小鳥のようには
感傷的になれずに
僕の黒い道化師たちは
いつの時代にも苦悩する
闇のアスファルトに咽んでいる
短くなった煙草のように
僕の生は自涜的だ
雨の海岸で骨組みの船を
組み上げることに必死で
僕は空を見たことがない
毒を孕む母の子宮に蛇が叫び
僕は羊水の中で窒息していた
ビルの恥部にバターを撫でつける
肉塊の奔流にカラスが巣を作り
僕は鉄条網に分裂していく
立入禁止の荒野には
プラスティックの扉がある
核実験の残骸が蠕動している
荒廃した表象を俯瞰する鳥のように
僕の宇宙には眼がない
眼という深刻な経験がない
均衡という成熟もない
死という世界の終末もない
僕はデジタル化された矩形の空間に
数字として永遠に繰り返される
一つの関係でしかない
太陽が描き出す不条理に調和する
幾何学の一つの性質でしかない
初夏の陽射しには
抗鬱剤のカプセルのように
番号が振ってあり
JR新宿駅から溢れ出す光の彼方には
数学的に静謐な暗黒がある











うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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