おっちゃん

まつおかずひろ(hiro)



 

競馬が好き



囲碁が好き



酒も好き






近所では



けんかで鳴らした



大男





 


女も



相当達者だったが



結婚してやめた




 


伴侶は十一歳若かった



通いのスナックで



奥さん美人ね、と言われて



目が細くなった


 




初めて子を



宿した妻の腹に



岩田帯を



しっかりと巻いた


 





無事故が自慢の



運送トラック運転手



娘二人



スポーツ選手になった




 


言葉づかいにも



帰宅時間にも きびしい



父親だったが



娘が二十歳を過ぎてからは



黙っていた




 


どうにか冬を越した





 


病室の花よりも



外の



緑が輝く季節がやってきた




 


ラジオが流れる



競馬中継だ



かあちゃんに馬券を買いにやらせる


 




眠っているのか



聞いているのか



目を閉じている




 


5 月14日、未明



黄色く変色してしまった顔が


とまった


 





口がわずかに開いて



銀歯をのぞかせていた































 




うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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