家路
かのっぴ
帰りの電車の眠気のなかで
かすかに鉄橋をわたる音と
それよりももっとかすかに
ありがとうの音を聞いた
深まった眠りは
みたこともない川原を
夢にみせた
草の匂いの中
あたたかな陽につつまれて
ありがとうが
次々に現われては消え
代わる代わる
僕に手をふっていた
目を覚ました僕は
夜の車窓の奥にある景色を眺めていた
少しおかしな夢だったな
などと思い返しながら
やがていつもの駅に着き
朝のような足取りで
電車をおりて家に向かった
冷たい空気が心地よかった
◆
うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次
◆
前のページ
◆
次のページ
■
Urokocity
■
Shimirin's HomePage
■
SiteMap
■