君という名の絶望

はやかわあやね



いつだって
君のくれるものは絶望以外の何ものでもない
その影は
いつだって僕の胸元で
その微笑みと一緒に揺れているのだ

絶望という名の希望は
何処に行ってしまったのか
そんなことは僕は知らない
ただ君のその笑顔の影には
決して微笑みは隠されておらず
僕を混沌とした暗闇の中に突き落とす
鍵だけを握っていることに間違いないのだ


君という名の絶望を
僕は手放すことが出来るだろうか

取りあえず
キャビンに仕舞っておいたコーヒーは捨てた
それだって未だ僕を魅了する香りが
でもそれさえももう
僕を引き止めることなど出来はしないのだ

陶器の入れ物の中で
固まってしまった砂糖をどうすればいいのだろう
バニラビーンズの香りはいつだって本当のもので
それは捨て去ろうとも捨てることなど出来はしないのだ

消え去ろうとしている記憶と
追憶の彼方に湿気を帯びて
燃え尽きようとしている思い出が
いつだって僕を捕らえ
君の元へ運んでくれることに違いはないが
でもその際立った香りが
今の僕には厳しすぎて
何もたゆたうことなく
虚しくすべてを過ぎ去ろうとしていることに
他の誰でもない君は気づいているのだろうか


そんなものを求めていたんじゃないんだよ
あぁそうなんだ
君は決して人形ではない
意志を持ったひとりの人間で
それに何よりも気づかなかったのは
僕の失態と言えるだろう

でもそれでも
君のことは忘れられない
忘れなくてはいけないから
だから今
僕は我が身のすべてを捨て去ることにするよ

暗闇に隠れる
君のすべてを
今僕は捨て去ることにしたんだよ






うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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