死に至る病

旅蔵





青い季節は過ぎて

眺める景色は澱んで見えて

知り過ぎるが故の苦悩は果てしなく

黄昏の鐘が盲目の瞼に響き

静寂の中で終幕の時を告げる

 
残され人は過去に生きて

美しさとは儚いものと知り

絶望の渦は苦しみを伴わず

むしろ何もない無力感で浮遊し

体が生きる事を嫌悪するのです

 
孤独と契りを交わして

ただ立ち尽す日々が

ただ顔を伏せる日々が

生きる衝動を蝕んで

意思を持たない体を手に入れた時

 
病は語り出すだろう

その名は 死に至る病

 


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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