| 62 BT30号原稿--秋の主題による独吟の試み--倉田良成 |
秋の主題による独吟の試み
倉田良成
あらためられた風
あらためられた空
布の色が変わる
潮騒も方向を変える
突堤にとどく違ったひびき
血液運搬車が信号で停まる
青い部屋のなかの人の影
太陽を真正面から受けて
ワゴン全体がぎらぎらとかがやく
そして欲しいのは血だけではない
剪られた花々がボウルからすっかり水を揚げている
見えない水は花のなかで発色する
欲望や快楽のかなたにある存在にむかって
おおきくひらかれた死者の眼にみちる
急激な来迎図
山の端からこぼれてくる
あらあらしい笙の息吹
婉然と咲くサルスベリの木のしたを
日傘をさした女が
白い地面に染みをつけながら
こちらのほうへひたひたと歩いてくる
この恐怖を
きみにどう説明したらよいのか
わからない
歯ブラシを口のなかに突っ込んで
ゆっくりと唄いだす雨の朝
(これがしぐれというものか)
私の赤ん坊は火の中心に置かれて
すやすやと眠る
月光に襲われる寺
はばまれてゐる西の道*
明るい叢林のおくの池で
魚鱗が躍る
それを
どこよりも低い視点からながめている
私は
世に流れる火を
キンモクセイの大群落がいっせいに匂いだす
黒い繁りの内部では
宝塔のような花弁がおびただしく灯るのだ
美しい秋の一日
私は病院に行く
脊椎の結晶をたわませて
複雑な味のするスープのように
妙な酔い心地になる小説を読む
全山は紅葉
険しい巌には
ハーケンと
猿*ましら*
街中がやがて書き殴られる雪に渇く
ランドサットの写す関東**
肉眼にいちじるしく示されてくる
飛白
*安東次男の句より
**清水鱗造の連句より
(この作品は1993年9月27日から28日のあいだに入力され、2002年7月19日に再録された。一部改稿)
〔ツリー構成〕
| 【62】 BT30号原稿--秋の主題による独吟の試み--倉田良成 2002/11/4(月)15:10 清水鱗造 (1419) |
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